読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

チラシのおもて

すきなものについて

熊倉献『春と盆暗』と森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』 愛すべき盆暗の話。

早速ですが、盆暗とは何ぞやという方に、盆暗についての解説を引用したので見てほしい。

『ぼんくら』の解説―
ぼんくらとは盆暗と書く賭博用語で、盆の中のサイコロを見通す能力に暗く、負けてばかりいる人のことをいった。 ここから、ぼんやりして物事がわかっていないさま、間が抜けたさま、更にそういった人を罵る言葉として使われる。 これとは別に「がんばれ」という意味で使われることがある。


そうそう、盆暗って嚙み砕いて噛み砕くと見えてくるのだが"愛すべきアホ"の事なのだ。そして、ついつい「がんばれ」と応援してしまう存在の事なのだ。そんな盆暗が活躍する作品として何を思い浮かべるだろうか。そう、僕は森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』がパッと思いつく。では少しだけ本作について触れてみたいと思います。


f:id:gennkissu:20170126173608j:plain

夜は短し歩けよ乙女』の作品概要―
京都大学と思われる大学や周辺地域を舞台にして、さえない男子学生と無邪気な後輩女性の恋物語を2人の視点から交互に描いている。諧謔にあふれる作品で、ときに現実を逸脱した不可思議なエピソードを交えている。古い文章からの引用が多い。タイトルは吉井勇作詞の『ゴンドラの唄』冒頭からとられている。

湯浅政明監督によりアニメーション映画化され、2017年4月7日に全国公開予定。


本作の語り手である"先輩"を通して物語を垣間見る訳なのであるが、この本名不明の腐れ大学生がまさに盆暗野郎なのだ。こんなに"腐れ"とか"盆暗"とか揶揄してるけど、僕自身も盆暗であると思っているので不思議と共感してしまうのだ。そんな彼が恋をしたのが、本作のもう一人の語り手である"黒髪の乙女"なのである。彼女はどんな人物かというと自由奔放で好奇心の塊であるという無邪気で子供のような印象を受けるかもしれないが、そんなイメージとは裏腹に彼女は"うわばみ(酒豪)"であったりする。自分の世界を突き進む彼女を好きになってしまうのは、盆暗大学生にとって茨の道であるのだ。どうにか"黒髪の乙女"の目に触れようと、彼女が京都の先斗町や学園祭、そして古本市に来る情報を掴むや否や偶然を装い出会おうとしたりと、姑息な手段を使う"腐れ"野郎なのだが、彼女が欲しがっている「絵本」を手に入れるために激辛鍋を食べて奮闘したりと意外な一面も見せる。そんな一途な姿は応援したくなるし、"愛すべき盆暗"ではないだろうか。是非とも、また森見登美彦さんには盆暗が主人公の話を書いてほしい。そんなこんなで愛すべき”盆暗"が好きな僕は盆暗に対して目がない訳で、バイト先の書店で『春と盆暗』を目にした時には、ついつい手に取っていた。というか、もう感覚がマヒしているのかスケラッコさんのタイトルに”盆暗”の”盆”が付いている『盆の国』を見た時には思わず運命すら感じてしまったのだ。しかし、今回紹介したい本は『春と盆暗』であるので、とりあえずどんな本かを紹介していきます。是非とも"盆暗"か"青春"に目がない人たちに読んでほしい傑作です。


f:id:gennkissu:20170126180805j:plain
f:id:gennkissu:20170126180427p:plain


『春と盆暗』の概要―
好きな子ができた。同じ職場の女の子。それも誰もが認める「いい人」キャラ。しかし僕は、彼女のとんでもない“頭の中”を知ってしまう!(『月面と眼窩』) 月刊『アフタヌーン』でデビューを飾った2017年最注目の新鋭、熊倉献(くまくら・こん)待望の初コミックス。さえない男子たちが予想外のドラマをつむぐ、4編の恋愛譚を収録。


僕はこれを公共の場で読みながら、とんでもなくニヤケていた。これこそ、この様な行動こそが”盆暗”であり、”盆暗”たり得る所以である訳だ。そんな事より、この漫画は4編のストーリーがあるのですが、どいつもこいつもまるで打ち合わせをしたかの様に、ちょっと頭がおかしい女の子(一応、褒め言葉です)に惹かれてしまうのだ。僕だって『化物語』なら戦場ヶ原だし、『いちご100%』なら自由奔放な西野つかさだし、『涼宮ハルヒの憂鬱』なら長門有希が好きなのだ。こんな僕と一致したあなたは絶対に本作が好きだと言っても過言ではない。そんな女の子たちに負けず劣らずで一癖も二癖もある女の子たちが『春と盆暗』には登場しています。例えば月面に標識を投げつける女の子とか、背が低くて上手く呼吸できなくて鯉のようにパクパクしながら呼吸する女の子とか、人を殴る癖がある女の子とか、ちょっと変(ちょっと所ではない?)なのだけど、そんな子たちの想像力溢れる世界や感性に触れることで、僕らは"普通の青春"ではない"宇宙を感じてしまう程の青春"を体感してしまう訳なのである。僕や『春と盆暗』の主人公たちの様に盆暗である君たちには、どうか落ち込まないで欲しい。いや気づいているかもしれないが、不思議な世界を持った女の子の魅力に気づき、手を差し伸べ、掬い上げる事が出来るのは僕たちだけなんだ。そう考えたら"盆暗"である事って更に最高やないでしょうか?



夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)