チラシのおもて

すきなものについて

読書始めは恩田陸『蜜蜂と遠雷』。

読書始めは何にしようかと迷い直木賞候補に挙げられていた恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を選びました。カバーを外すとピアノを想起させる黒い装丁が現れ、手触りまでピアノの様であるし、ページをめくるとまず登場人物たちがコンクールに出場する際に選曲した曲の順序で並べられていてたりと、とにかく拘り抜いた出来に仕上がっていて出来れば紙の本をオススメしたい。

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因みにオードリーの若林さんがMCの文筆系トークバラエティ「ご本、出しときますね?」という番組に出演した作家の朝井リョウさんも”悔しいけど、面白い本”に挙げていて直木賞を取ると予想をしている。直木賞の選考結果は今月の19日に発表されるので、とても楽しみです。個人的には森見登美彦さんにも取って欲しいですが、『蜜蜂と遠雷』を推したい!


蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

-あらすじ-
舞台は芳ケ江(よしがえ)国際ピアノコンクール。3年ごとに開催され、6回目を迎えるこのコンクールは、優勝者が世界屈指のSコンクールでも優勝した実績があり、近年評価が高い。コンテスタント(演奏者)や審査員たちだけでなく、調律師やテレビの取材者など、さまざまな人間の生き方、考え方が交錯し、白熱する。


恩田陸さんは初めてで読んだ事がなく、しかもピアノコンクールが舞台という事で自分とは違う遠い世界の話である事と500ページで二段組みという分量に対して買った事を後悔してしまうのではと思っていたが、それは全くの杞憂でした。

明るい野山を群れ飛ぶ無数の蜜蜂は、世界を祝福する音符であると。
そして、世界とは、いつもなんという至上の音楽に満たされていたことだろう、と。


プロローグの数ページに書かれていた音楽への愛を感じさせる表現にグッとつかまれてしまい、後は最後まで一気に読破。まるで本の中から音楽が溢れ出してくる様な気さえしてしまう程に緻密な描写で、とにかく感動してしまった。ここまで音楽を言葉で表現出来てしまうのか、と。読んでいて本当に音楽の素晴らしさ、そして無くてはならない物だと再認識させられました。素晴らしい一冊で今年が始まってしまった!


We can make it!

We can make it!


凄く蛇足かもしれないですが、初めて買ったCDが嵐の「We can make it!」(2007)だった。松本潤主演のドラマ『バンビ〜ノ!』が大好きで、その主題歌になってる。初めて触れた音楽は嵐だったと言っても過言では無いかもしれない。カップリング曲の「Di-Li-Li」が本当に素晴らしいので是非とも聞いて欲しい。

Di-Li-LI 発車のベルが僕らの背中押すよ
明日へ続くトビラは もう開いているから
ここで何かが変わる 今がスタートの時
少し踏み出す そのステップから始まる
広い 広い 未来


この頃は、大野くんや相葉くんはドラマで主演を張ったりという感じではなかったので、所謂いまの嵐人気とはかけ離れていた様に思える。(「うたばん」もはや懐かしい!)人気に拍車を掛けたのは「One Love」辺りだろうか。語り始めると長くなりそうだ。
櫻井くんも作詞に関わっている「Di-Li-Li」の歌詞を読むと、この時代が嵐にとって何か転換期であったのではと感じざるを得ない物となっている。その予感は的中し、この曲の数年後に嵐が国民的アイドルに成長するんだよなぁ。こんな感じで話は脱線してしまいましたが、僕はジャニーズが大好きなので今後ジャニーズに特化したブログを書きたい!

ブログはじめました。

散歩をしながら、見た映画や本の事、色んな事を考えていたらブログを書きたくなった。以前、好きな事を自由に書く場所として「チラシの裏」というタイトルでブログを始めたが、あまりにも続かなかった。

チラシの裏とは、紙広告(チラシ)の裏側の事。裏に何も印刷されてないチラシはメモ帳や落書きに使える。

今回ブログを始めるにあたって、様々なポップカルチャーへの愛を”言葉”でチラシの表面の様にいっぱいに埋められたらという想いを込めてタイトルは「チラシのおもて」。

少し自分語りをすると、僕は数ヶ月前まで失恋で鬱病のような状態だった。そんな状態を救ったのが、やっぱりポップカルチャーの存在で、改めて自分を形成しているのが映画や漫画、小説、音楽、ドラマといった物で、そんな愛すべき物たちへ少しでも感謝の気持ちを言葉で綴れればなと思っています。

自分の性質上、過去を引きずってしまいがちなのですが、やはり出会いは良いなと思った。色んな人と交流してみて、その人を形成する様々なカルチャーや価値観に触れる事で自分の考えや世界が更新されていく様な気がした。そうやって自分の価値観が肉付けされていっては、社会の不安に揉まれて削がれていって、そういうのが繰り替えされて洗練されて自分が出来ていく、そんな気がする。

そういえば失恋真っ只中の状態で公開初日に『君の名は。』を見た。『ほしのこえ』(2002)*1、『秒速5センチメートル』(2007)の新海誠監督の新作だけあって素晴らしい作品だったし、過去作の集大成であり、過去作に対する違う結末を用意した様な謂わばアナザーストーリーの様でもある。更には『もののけ姫』(1997)や『千と千尋の神隠し』(2001)、そして『東京ゴッドファーザーズ』(2003)の作画監督である安藤雅司*2を起用している。それもあってか、あるシーンで同年公開のスタジオジブリ作『レッドタートル』(2016)以上にジブリっぽさを『君の名は。』では感じる作画があった。しかし本当に申し訳ない事ですが見た時は、かなり鬱屈とした精神状態で世界が混沌として見えてしまうあまり、煌びやかすぎる映画の世界に苛立ちさえ覚えてしまったのを鮮明に記憶している。

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やはり本作でも新海作品に何度も見られる"時間"や"距離"が生む”すれ違い”、そして"結び"と"記憶"が物語において重要な要素として記号的に散りばめられていた様に思える。『君の名は。』の為に作られたRADWIMPSの楽曲からもそれは少なからず伺える。(個人的に映画音楽は、instrumental派なので何度もRADWIMPSの歌声入ってムカついた!笑)

運命だとか未来とかって 言葉がどれだけ手を
伸ばそうと届かない 場所で僕ら恋をする
時計の針も二人を 横目に見ながら進む
そんな世界を二人で 一生 いや、何章でも*3

見てない方にとっては、ネタバレになってしまいますが、とても好きなシーンが瀧(声:神木隆之介)と三葉(声:上白石萌音)が片割れ時(=黄昏時)に二つの時間軸を飛び越えて出会うシーン。二人がやっと出会う円状の舞台は時計の円盤の様であるし、重なってはすれ違う二人はまるで時計の針の様に思える。そんな二人が時間という概念をも飛び越えて、ついに出会ってしまうのだから涙が溢れない訳がない。それでも、やっぱり新海誠だなぁと思うのは、この素晴らしいボーイ・ミーツ・ガールな出来事も忘れてしまうという所から感じられる。ただ、これは新海誠なりに考えた忘却が生む”希望”という物ではないのかなぁと思った。

僕は失恋直後は忘れるという事、つまり忘却について懐疑的であったのだけど、今思うとやっぱり辛かった記憶も徐々に薄れていく物で、いつまでも過去を見つめているだけでは、出会うかもしれない"誰か"との可能性さえ否定する事に成りかねないのだなと本作から感じ得た様な気がしている。

8月から未だに上映している『君の名は。』ですが、いつ終わってしまうか分からないので、近々また見たいと思います。震災という観点から物語を考察する事も出来る作品だけど、あまり震災についてどうこう言える立場ではないし、僕がやる事ではないのでしない。ゼロ年代以降の作品についての批評を書いた本が出たりしていたので、きっと震災以降の作品について考察した本が今後沢山出るのではないかなと。もう少し、つらつらと語り倒したい所ですがブログに慣れてないので、この辺で。

*1:ほしのこえ』は超大好きな傑作

*2:宮崎駿と色々とあって2003年頃からジブリを離れフリーで活動。2014年公開の『思い出のマーニー』では久々にジブリ作品の作画監督をしている。

*3:RADWIMPSスパークル」の歌詞